魚の町、静岡県焼津市にある動物病院のブログです。☎ 054-628-6468

猫の低血糖について

今回は、猫では比較的まれといわれている低血糖の症例です。


症例は日本猫、16歳のメスで、初診時の体重は1.3kg、ボディーコンディションスコアーは2/5です。

夜中に急に吐き出したという主訴で来院しました。

深夜の来院でしたので皮下点滴、吐き気止め、抗生物質の投与で様子をみていただくことにしましたが、その4時間後に今度は痙攣を起こし、再来院しました。

急遽、血液検査と腹部エコー検査をしたところ、低血糖(Glu 22mg/dl)と肝機能障害(AST >1000IU/L, ALT 431IU/L, ALP 355IU/L)が確認されました。

低血糖の救急治療としてグルコースの静脈内点滴を開始したところ、状態は改善しその後は痙攣を起こすことはありませんでした。

入院2日後には食欲、元気とも正常になり、入院3日後には退院しました。

第2病日のの血液検査は、Glu 152mg/dl, AST 321IU/L, ALT 347IU/L, ALP 91IU/L でした。

T4は11.5μg/dlで、甲状腺機能亢進症が基礎疾患として存在することが考えられました。



今回の症例の低血糖を起こした原因を考えてみたいと思います。

低血糖の鑑別診断としては、下記のものが挙げられます。

測定エラー
医原性(インスリン)
肝不全
敗血症
トイ種の新生児低血糖
狩猟犬の低血糖
副腎皮質機能低下症
飢餓
腫瘍(インスリノーマ、肝癌など)
グリコーゲン貯蔵病

稟告から、医原性、敗血症、飢餓は除外され、猫であることからトイ種の新生児低血糖、狩猟犬の低血糖も除外されます。測定エラーはなく、副腎皮質機能低下症やインスリノーマはねこでは非常にまれと言われていることから肝不全による低血糖と考えるのが妥当であると思われました。

T4が高値を示したことから、甲状腺機能亢進症が基礎疾患として存在し、肝機能に何らかの影響を及ぼしているものと考えられました。

しかし、教科書的にはALT,ALPの上昇は過剰なホルモンが細胞活性を高めるためで、肝障害が起こるわけではないと記載されています。

その後の治療は点滴(第12病日まで)と、強肝剤(第23病日まで)、高栄養食、糖分の給餌(継続治療とする)、さらに第9病日からチアマゾールの投与を開始しました。

肝酵素の数値も徐々に改善が見られ、第30病日には正常となり体重も1.65kgと増加ました。

第77病日の定期検査においては、血液検査はほぼすべての項目で正常で、体重も1.88kgまで増えていました。

T4は第30病日に4.6μg/lでしたが、第65病日には7.2μg/lと上昇したため、チアマゾールの投与量を増やし、現在は良好に維持しています。

今回の症例は、はっきりとした因果関係はわかりませんが、肝機能不全により低血糖を起こし基礎疾患として甲状腺機能亢進症が何らかの関与があったものと思われました。

さらに確定診断に至るには、肝臓のバイオプシー検査や、微細な腫瘍までの存在を把握するための精密検査等が必要であると思われますが、年齢や現在の病態を考慮するとあまり負担のかかる検査はかえって危険を伴うものと考えられます。


ここまで良好な経過が得られたのは、ただ治療が奏功したというだけではなく、飼い主様のネコちゃんへの愛情、日々の患護が大きいのだと改めて考えさせられました。

今回の症例は深夜4時の救急診療でした。夜間や休診日の診察は、出来るだけ長めにコールしてください。よろしくお願いします。

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