魚の町、静岡県焼津市にある動物病院のブログです。☎ 054-628-6468

当院の麻酔について

麻酔には必ずリスクを伴いますが、当院ではそれを最小限にするためにさまざまな措置に努めています。
今回は特に重要視している10の項目について説明します。

1)麻酔をかける前の動物の状態(病態)を的確に把握する。

まず問診と一般的な身体検査をします。必要であれば血液検査、レントゲン検査、エコー検査等を行い動物の状態を総合評価します。健康な状態が確認されれば問題ないのですが、病的な異常が認められた場合は最終的に手術すべきか、治療をしてある程度状態を改善させてから手術するのか、または手術不適応とするのかを検討しオーナー様とよく話し合います。



2)ペインコントロール

ブトルファノール等の鎮痛薬、メロキシカム等のNSAIDs、ブピバカイン等の局所麻酔薬などを手術前後、または術中に状態に応じて使用します。以前は動物は痛みには強いので術後の痛み止めは必要ないとか、痛いほうが安静が保てるのでかえって良いなどと思われていた所もありますが、今は痛みを抑えたほうが術後の容態は安定するという考えが定着しています。
3)動物の状態や性格に応じて最も適した麻酔法を行う。

通常の麻酔法はトランキライザー、鎮静剤、鎮痛剤、アトロピンなどを使った麻酔前投与、主にプロポフォールを用いた導入麻酔、そして気管チューブを挿管してイソフルランまたはセボフルランによる維持吸入麻酔となりますが、それぞれの麻酔法にはバリエーションがあり、動物の病態に対応した麻酔法を行っています。また屋外の猫ちゃんで人に慣れていない場合などは、チャンバーに入れて直接イソフルラン等の吸入麻酔を使用しています。

チャンバー

これがチャンバーです。自分で作りました。この中に動物を入れて吸入麻酔をかけます。



4)再呼吸回路と非再呼吸回路を体重によって使い分ける。

再呼吸回路は呼吸抵抗が大きいため、この回路を循環させるには力強い呼吸が必要になります。猫や7キロ未満の小型犬では呼吸抵抗が少なく死腔が小さい非再呼吸回路を使用し、7キロ以上の体重の動物は再呼吸回路を使用するようにしています。

ジャクソンリース

非再呼吸回路はこのジャクソンリースの改良型を使います。



再呼吸回路

再呼吸回路はこの麻酔器を使います。話にはでてきませんでしたが、上に乗っている機械が人工呼吸器(ベンチレーター)です。呼吸が弱い時や開胸術の時に使用します。



5)維持麻酔はイソフルランとセボフルランを使い分ける。

イソフルランは約99%が呼吸により排泄され、約1%のみ肝臓、腎臓で代謝されると言われております。したがってイソフルランは肝臓、腎臓等、生体にかかる負担は最小限なものになっております。またイソフルランが刺激臭があるのに対し、セボフルランは低刺激性な薬物であるため、マスク導入やチャンバー導入に用いるのに適しています。特にエキゾチックアニマルの手術には有効です。

気化器

向かって左がイソフルランの気化器、右がセボフルランの気化器です。液体の麻酔薬を気化し吸入させます。



6)モニタリングを徹底する。

麻酔中のモニタリングで最も重要なのは、循環、換気、酸素化の3項目です。当院では麻酔モニターを使い循環のモニタリングは心電図、血圧、換気は呼吸数、ETCO2(終末呼気二酸化炭素分圧)、酸素化はSPO2(動脈血酸素飽和度)を測定し常に監視を行っております。他にもこの麻酔モニターで麻酔ガス濃度、体温も測定できます。特にETCO2は生命の危機の早期発見に非常に有効です。

麻酔モニター

フクダMEさんの麻酔モニターを使っています。



7)手術の時間をなるべく短縮する。

電気メスや半導体レーザーを駆使し止血や軟部組織の切開時などの手術時間を短縮します。さらになるべく動物の体に縫合糸を残さないようにレーザーでシーリングするなどの配慮をしております。半導体レーザーは他にも数々の用途がありますが、それはまた次の機会に説明します。

レーザー、電気メス

向かって左が電気メス、右が半導体レーザーの機械です。これらがあるとないとでは手術時間が全く変わってきます。



8)手術が終わったら動物をやさしくすみやかに覚醒させる。

イソフルランは非常に良い麻酔薬ですが術後の鎮痛作用はほとんど無いとされています。したがって手術後にはペインコントロールが必要になります。さらに覚醒時には気道・呼吸のトラブルが多い時期なので麻酔が覚めたらすみやかに気管チューブを抜管し、5分間以上は酸素を吸わせ状態をよく監視します。




9)術後管理

術野の洗浄、消毒や抗生物質の投与はもちろんですが、術後の状態に対応して点滴処置、ペインコントロール、必要であればさらに他の内科療法をします。




10)それでも起こるかもしれないトラブルに対して速やかに対応する。

それでも予測できない事態に陥る可能性がありますので、徹底した術中・術後管理と、常に万が一に備えエマージェンシーに対応したマニュアルの掲示、薬剤の準備等をしております。



なるべくオーナー様にわかりやすく簡単に説明したつもりですが、いかがだったでしょうか?